加賀乙彦「砂上」概要とか

集英社文庫「異郷」に収録。(他にも全集などにあり)

 敗戦つぎの夏。
 微笑みを絶やさぬ事をモットーとする「ぼく」は、E国大使館で、大使館付きのタイピスト・ミスK附きのボーイ臨時雇の17歳。しかしその微笑みは老人の笑みで、色情狂のような目で、誰よりもこころは年寄りだ。
 歳を誤魔化してミスターSに世話になっているメイドと、料理の腕も確かな女性コックとの板挟みでは、ただ微笑むしかない。E国大使館という異郷から、異郷の街をみる。ぼくに文字通り無関心なミスKは美人だ。彼女を始め、ぼく−日本人−を人間と見なさないE国人達。
 ぼくにつきまとう、唯一握手をしたE国人、オラン・ウータンに似た大男Gとの無言のやりとり。日本人らしくない通訳。彼らに誘われて、ドライブに行くと、猛スピードで車を飛ばすGが傷病兵と接触事故を起こす。それを大笑いした後、萎んだように普通の運転になったGの手は汗で湿っていた。
 それ以来「ぼく」にまとわりつくG。海に行ったとき、岩の上で愛撫されて、それをうっとりと受け入れる「ぼく」は学校時代、そう言う経験がある。結局、ミスKを使っての処理と、このGとの接触が「ぼく」を安定させている。
 戦争時代の夢を見る。少年兵だった頃、何度も匍匐前進して戦車に突撃する訓練の繰り返し。普通に歩いている人間が高級に見えた。誰かが「武士道とは這うことと見つけたり」と言っていたが、全く「ぼくら」はそう思っていた。茶化しでなく、本当に。
 次の週にミスKの婚約者を呼んだパーティ準備の最中に抜け出して、泊まりがけで海に行く。Gに海辺で捕まえられて、抱き上げられた後、額にキスをされた。周りも気にせずに二人で砂浜を転げた後、同じ部屋に通訳と見知らぬ女がいることもどうでも良くなって、外見に似合わず優しいGを自然な気持ちで受け入れる。一言も話したことがないのに。翌朝、女に「あんたが一番時間を気にするのに、時計を持っていない」と笑われる。
 砂浜で、一心に前へ進む亀を持ち上げて、元の位置に戻して遊ぶ子供達を見る。亀は愚直に前に進む。見ていたら涙が出てきて、あわてて海に飛び込んだが、それをGは見ていた。ホントにオラン・ウータンみたいだ。夜遅く帰ってきてから、来週のことを話す通訳に「来週にはここにいないから」と告げる。

 というのが、日記形式で書かれた短編。


「ガタイいい体育会系で少しこころにキズ有り、ちょうメロメロ魅惑されてる外人」×「目の大きいお稚児さん的な、つれないくせに小悪魔退廃美少年」です。公式カプ。
(この「ちょう体育系→→美少年」っていう組み合わせは、加賀文学の鉄板のようだ)
主人公…ちょう小悪魔なんだよ…。このこ自然に受け入れちゃってるし、そう言うの嫌いじゃないって言うし(軍学校時代、上級生相手に経験済。他方では今の女主人で「処理」してるえろすな子)、主人公に熱入れあげちゃってるごつい外人を「オラン・ウータン」みたいとか酷評して鬱陶しげにあしらっておきながら、結構観察したり逞しい身体好きとかおまえはー。そんな花の17歳。元超エリート軍国少年でした。
ごついこの外人にものすっごいつれないことこの上ないw

で、外人やってることは破綻的なのに意外に真摯なんだよな。執拗いくらいに遊びに誘うんだよ。かわいそうでぎゃくにかわいい…。こいつ、始めは多分外見好みで気になったーから、絶対深みにハマったな。額にキスは素で驚いた…!そう来るか!意外に紳士じゃねーか!

あ、彼のえろすは彼の破綻した自我をぎりぎりで直す方法…らしい(解説)。
老人の精神に支配されてる彼の中で、えろす=本能=彼自身の実年齢で唯一生きてる時間軸を彼が自覚出来るものだから?でも自慰と同性愛なので、発展性がまるでないことに注目。と言う感じか。


→これらを踏まえてどうぞ










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